医学部ではどのような理由で留年になる

医学部ではどのような理由で留年になるかを解説

医学部は、留年する医学部生の数が非常に多いのが特徴で、その数は近年になって増えてきているという現状があります。

また、医学部は「入学も進級も難しい学部である」ということでもよく知られています。

なぜ、医学部では留年する学生が多いのでしょうか。また、どのような特徴を持った医学部生が留年しやすいのでしょうか。

ここでは、医学部の留年について詳しく解説していきます。

1.留年の理由にはどのようなものがあるのか

医学部の留年の理由で一番多いのが、「単位を取ることができなかった」というものです。

このような理由であれば、他の学部でも同様に留年しやすいのではないかと思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、他の学部では「2年次終了までに教養課程を40単位以上取っていれば進級可能」であるとか、「外国語科目を2年次までに履修していれば進級可能」など、医学部に比べて単位の取得条件が緩やかであるため、医学部ほど留年する人は多くありません。

それに対して医学部は、1年次の段階から「必修科目を1科目でも落としたら即留年決定」という厳しい決まりがあります。

他の学部であれば、時間割を組むときに数単位落としても進級できるよういわば「保険」をかけることができるのに対して、医学部では時間割がみっちりと詰まっているためそのように保険をかけることもできない上に、一単位も落とすことができないのです。

また、ほとんどの医学部では毎週のように絶対に落とせないテストが実施されます。

そのため、苦手科目が1科目でもあれば常に留年の危機にさらされている状態にあると言っても過言ではないのです。

2.何年まで留年できるのか

医学部に限らず、留年は何年でもできるわけではありません。

その医学部で決められた年数をオーバーして留年することはできないため、それ以上単位を落としてしまうと退学となってしまいます。

留年できる年数は医学部によって異なりますが、留年できる年数を在学期間の2倍までと定めている大学が多いようです。

医学部の在学期間は6年間ですから、それと同じ6年間まで留年が認められ、最大12年間在学できる医学部が多くなっています。

しかし、同じ年次には2年以上在学できないなど、医学部により細かな決まりの違いがあるため、同じ学年で2回留年することはできず自動的に退学になってしまうなどといった決まりがある医学部もあります。

留年はしないに越したことはありませんが、医学部を受験する前に自分が志望する医学部では留年に関してどのような決まりがあるのか調べておくと良いでしょう。

3.留年しやすい学年はあるのか?

一般社団法人全国医学部長病院長会議の調査によると、1年次の留年が最も多くさらに増加している傾向があります。

1年次の留年が多い理由には、基礎医学の存在が考えられます。

医学部では入学直後からは教養科目を学び、その後基礎医学と臨床医学の勉強が始まります。

この基礎医学の授業は、早い大学では1年次から始まります。基礎医学は覚えることが多い科目であるため、医学部生は暗記に追われる日々となります。

医学部生は、慣れない大学生活の中で非常に多くの内容を効率的に覚える必要が出てくるため、非常に大きな負担となり、勉強についていけず留年してしまうケースが増えてきているのです。

また、医学部に無事入学できたという安心感から気が緩み、勉強に身が入らなくなる医学部生や、医学部に合格したことで「燃え尽き症候群」のような状態になってしまう医学部生も少なくありません。

このような理由から、1年次の留年が非常に多くなっているのです。

4.国立医学部よりも私立医学部のほうが留年しやすい

国立医学部よりも私立医学部のほうが、留年しやすい傾向があります。

それは私立医学部のほうが、進級判定が厳しいためです。

また、私立医学部では留年する医学部生が多くても、医師国家試験の合格者割合は非常に高い点が特徴です。

このようなことから、医師国家試験に合格できそうにない医学生は積極的に留年させしっかりとした実力を身につけさせてから次の年次に進級させる。もしくは、実力が身につかない場合には留年を重ねて医学部を去ってもらいたいという私立医学部側の意図を読み取ることができます。

ほとんどの私立医学部は、学費が非常に高額であることで知られています。

私立医学部卒業生の医師国家試験合格率が高ければ、学費がいくら高額でも保護者や受験生本人も、その医学部に行けば医師になりやすいと思ってしまいがちです。

そのため、私立医学部は医師国家試験の合格率を上げるために医師に向いていない、または医師国家試験に合格できそうにない医学部生を在学中から選別しています。

そのような理由から、私立医学部の進級判定は非常に厳しくなっているのです。

5.留年しやすい人の傾向とは

留年しやすい人には、共通した特徴があります。

ここでは留年しやすい人の特徴について、詳しく解説していきます。

(1)まじめに勉強しない

サークル活動や部活動にのめり込みすぎて、日々の勉強にあまり重きを置かない人は単位を落としやすく、当然の事ながら留年しやすい傾向があります。

さらにこのようなタイプの人は留年してもあまり気にせずに、そのまま課外活動で医学部生活を充実させようとします。留年を繰り返しても懲りないという性質を持つ人も少なくありません。

文武両道という言葉もありますが、勉強以外の課外活動に関しては勉強の余暇に行うようにし、医学部生の本分は勉強だということを忘れないようにしましょう。

(2)交友関係が狭い

医学部内において多くの人と交流して良好な交友関係を築いておくことで、試験や授業の情報が非常に手に入りやすくなります。

このような情報を手にしておくことで、試験対策などができるので結果として良い成績を修めることができ、留年しづらくなります。

そのため、交友関係が狭く友人や先輩とあまり付き合いのない人は、試験勉強などに有利となる情報を手に入れることができずに、単位を落としてしまうような状況になることも考えられます。

また、良い交友関係の友人を持つと、彼らはそのまま良きライバルとなります。そして、助け合ったり、競い合ったりしながら勉強に励むことができるため、医学部での勉強に対するモチベーションを高く保ち続けることができます。

このような理由から、交友関係が狭い人は留年しやすいといえます。

(3)もともと地頭が良い

もともと地頭が良く、特に猛勉強をしなくても医学部に入学できたという人が、実は留年しやすい人であるといえます。

地頭が良くあまり勉強をしなくても、ストレートで医学部を卒業して医師国家試験に合格する人もいるのかもしれませんが、そのような人はごくごく稀です。

地頭が良くて、もともとあまり勉強しなくても良い成績を修めることができていた人でも、いつか必ず限界がきて勉強をしないと、医学部の授業についていけなくなる時が来ます。

その時に地頭が良い人は、もともとこつこつ勉強するという習慣を持っていないため、日々の授業についていくための自習をしっかり行うことができなくなります。

その結果留年してしまう可能性が高くなります。

(4)入試の際に物理を選択している

医学部受験の際に、物理を選択して合格した医学部生は、入学直後から勉強につまずきやすくなり、1年次で留年してしまう可能性が非常に高くなります。

医学部の授業はそのほとんどが生物学に関する内容であり、入学直後から生物学系の難しい授業が始まります。

医学部入試で物理を選んだ人は、生物より物理のほうが得意だからという単純な理由から物理を選択したものと思います。ですが、医学部に入学してからは生物が得意な人のほうが好成績を修めることができるのです。

そのため、生物が得意ではないために物理を選んで医学部入試に臨んだ人は、医学部の生物学系の授業についていくことができず、留年してしまうおそれが高くなるのです。

(5)精神面のストレスに弱い

医学部に入学してから成績が思わしくなく、何度も再試に追われたりするような状態に陥ってしまうなどして、長期間の精神的ストレスにさらされてしまうことも想定されます。

そのような状況が続くと、うつ病を発症してしまうこともあります。うつ病は甘えや心の弱さからくるものではない、立派な病気です。

勉強についていけなくなり、そのような状態が長く続き、それでも次から次に迫りくる圧倒的な必要な勉強量に大きなストレスを感じてしまい、うつ病を発症してしまう人もいます。

このようにしてうつ病になってしまった人は勉強を続けることはおろか、授業に出ることすらできなくなるので留年してしまうことが多くなります。

6.留年しないためには高いモチベーションを保つことが不可欠

医学部のカリキュラムをこなしていく最終的な目標は、医師国家試験に合格することです。

そのための勉強量は他の学部とは比べ物にならず、それらを最短6年で習得しなければなりません。

そこで大切なのは、医学部で学び続ける間も、勉強に対する高いモチベーションを保ち続ける必要があります。

勉強に対するモチベーションが下がると、成績も振るわなくなり、結果として留年に結び付いてしまう可能性もあります。

そのため、同じ医学部生同士良い交友関係を築きながら切磋琢磨し、高いモチベーションを維持するようにしましょう。

まとめ

ここまで、医学部と留年について詳しく解説してきました。

留年の理由はただ一つ、「単位が取れなかった」という理由のみです。

そのため、留年しないためには医学部に入学できてからも気を緩めることなく勉強に励む必要があります。医学部は留年する人が珍しくない学部ですが、留年を重ねると今度は退学という事態になってしまうことも考えられます。

ここで解説した「留年しやすい人」の特徴に当てはまる人は、特に留年に気を付け、留年することなく医師国家試験の合格を目指しましょう。

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