医学部はどうして6年制

医学部はどうして6年制?一人前の医者になるまで何年かかるかについても解説

ほとんどの大学の学部が4年制であるのに対して、医学部は6年制になっています

医学部以外では歯学部や薬学部、獣医学部も6年制になっていますが、なぜ医学部やこのような学部のみ6年制が採用されているのでしょうか。

また、医学部を卒業して医師国家試験に合格すれば、自動的に医師として社会的に信頼されて認めてもらうことができるようになるのでしょうか。

ここでは、医学部が6年制である理由やその6年間で学ぶカリキュラムとその流れ、勉強以外に医師になるためにしておいたほうが良いことなどについて解説していきます。

1.医学部が6年制である理由

医学部が6年制である理由の一つに、教育基本法で定められているからといった理由があります。

その法律とは、教育基本法です。

その教育基本法第八十七条第二項において、医学・歯学・薬学を履修する過程のうち臨床で実践的な能力を培うため、修業年数が6年と定められています。

この教育基本法に基づいて6年制と定められている学部の共通点は、すべて医療に関することを勉強する学部であるという点です。

獣医学部を含めても、これら6年制と定められている学部の全てで学ぶことは、命にかかわりがあることです。

他の4年制の学部よりも学ぶことが多いため、必要な知識や経験を習得するために6年制が採用されています。

医学部が6年制であるもう一つの理由は、先にも少々触れましたが医師として活躍するには幅広い知識と技術が必要であるため、これらの習得に他の学問より時間が必要であるということです。

医師として活躍するためには、自分が専門とする診療科以外の知識も必要になります。

なぜ、自分の専門とする診療科以外の知識も必要とされるのでしょうか。

医師になって緊急事態に遭遇した場合には、自分の専門の分野以外の患者に対しても治療を行わなければならないシーンに遭遇することもあるかもしれません。

どのような状況でも医師は患者に対して適切な治療を施す必要があるため、専門とする分野以外の知識や能力も身につけておく必要があるのです。

この二つの理由から、医師になるためには6年間という他ほとんどの学部より長い時間をかけて深く広くさまざまな知識を身につける必要があるのです。

2.6年間でどのような勉強を行うのか

医学部で学ぶ内容は、他の学部と同様に大きく教養科目と専門科目の二つに分けることができます。

教養課程とは一般教養のことで、社会人となった場合に身につけておくべき知識のことです。

専門科目には、基礎医学と臨床医学があります。

医学部に入学したらまず教養課程で一般教養を学び、その次に基礎医学、その後に臨床医学を学ぶという流れで知識を身につけていきます。

ここまでの内容を4年間で学んでいくのですが、その中には倫理観やコミュニケーション能力、問題解決力を育てるためのカリキュラムもあります。

これらの知識を習得し終わる4年次には、共用試験を受験しこれに合格した医学部生のみが、その後の臨床実習に進むことができます。

臨床実習とは机上の学問ではなく、実際に大学病院や総合病院などで各診療科の診察の基本や診察法、診察手技などを学ぶことを言います。近年の臨床実習は診療参加型へと変化してきているため、診療実習がより実践的な学びの場となるケースも増えてきています。

診療参加型実習とは、指導医や研修医などによる診療チームと一緒に患者の診療を行うことを言います。

3.医師になるためには卒業試験と国家試験に合格する必要がある

医師になるためには、単に6年間の授業の単位を落とすことなく、ただこなせばよいという訳ではありません。

6年次に行われる卒業試験に合格した後、国家試験に合格してから、初めて医師を名乗ることができるのです。

まず卒業試験についてですが、試験科目は各大学により異なりますが少ない場合でも10科目、多い大学では30科目に及ぶこともあり、これらすべてに合格する必要があります。

この試験の期間は1か月から長い場合には3か月程度の期間に及ぶこともあり、ただでさえ勉強に追われている医学部生が、さらに勉強しなければいけない期間です。

この卒業試験の結果が思わしくなかった場合には留年する可能性があります。しかし、大学によっては追試が行われることもあるため、最初の卒業試験の結果が悪かったからといってその年の卒業試験への合格を諦めないようにしましょう。

この卒業試験に合格して初めて、医師国家試験を受けることができます。

医師国家試験は毎年2月ごろ行われ、その受験資格は医学部の卒業試験に合格した者またはその見込みの者が対象です。

試験は2日間に分けて行われ、その科目は内科系、臨床現場を想定した問題、法律や統計など幅広い分野に及びます。この2つの試験に合格して初めて、医師となることができます。

4.医師免許を取得すればすぐに医療行為ができる?

医師免許を取得したら、すぐに医療行為を行うことができるようになります。

しかし、1999年に改正された医師法第16条の2において、「診療に従事しようとする意志は、2年以上、医学を履修する過程を置く大学に付属する病院または厚生労働大臣の指定する病院において、臨床研修を受けなければならない」と定められています。

2004年度からは、臨床医として勤務するためには2年以上の臨床研修を行うことが努力義務とされました。

そのため、医療行為を行うことは医師国家試験合格後すぐに可能になりますが、診療に従事しようとする場合には、2年以上の臨床研修を行うことが必要です。

以前は大学の付属病院で研修医として勤務することが一般的でしたが、近年では民間の病院で研修医として勤務する医師も増えてきています。

5.一人前の医師になるには何年かかるのか

医学部で6年間学ぶだけで、一人前の医師になれるわけではありません。

医師国家免許取得後に研修医として2年間初期臨床研修を受けることが、法律で努力義務として定められています。

初期臨床研修では、専門分野に偏らずに一般的な診療に総合的に対応するための基本的な能力を身につけることを目標としています。

この期間は、指導医の指導の下で診療に当たります。

この初期臨床研修では内科、救急部門、地域医療の3つの診療科が必須科目とされています。それ以外にも外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科の中から2科目を選択し、研修に臨みます。

この初期臨床研修を終えて、初めて保険医登録を行うことができるようになり、開業もできるようになります。

法律で努力義務とされている初期臨床研究を終えた後は、3年から4年程度の後期臨床研修を行うことが一般的です。

後期臨床研修とは、初期臨床研修での経験をもとに自分が進みたい診療科の専門医の下で指導を受けるという
流れになります。

この後期臨床研修中には、医師としてアルバイトを行うこともできるようになります。

後期臨床研修は法律で義務付けられているわけではありませんが、認定医や専門医になるためにほとんどの医師が受けています。

一人前の医師になるためには最速でも医学部での6年間と、2つの研修期間を合わせた11年から12年かかると考えておきましょう。

6.医学部在学中は勉強漬けの日々なのか

医学部の学生は勉強漬けの毎日で、部活やアルバイトを行う時間など持てないのではないかと考えている人も少なくないと思います。

しかし、医学部の6年間を通して勉強漬けの毎日なのかというと、そうではありません。

教養課程の期間や臨床医学を学ぶ4年次前期までの間は、比較的時間に余裕があるため、クラブ活動やサークル活動、飲み会などに参加する医学部生は少なくありません。

その後は各種試験や実習などであまり余暇を楽しむ余裕はないかもしれませんが、6年間を通してずっと勉強漬けの毎日であるという訳ではないのです。

現に医学部でも、サークルやクラブ活動は活発に行われています。

このサークル活動やクラブ活動で他の学部と異なるところは、医学部生のみでこれらのサークルや部活を作っていることが多いという点です。

そのため、このようなサークル活動やクラブ活動に参加することによって、医学部生同士の横のつながりができるというメリットがあります。

その結果人脈を広げることができるので、学生時代であれば試験や授業の情報を得ることができます。そして、医師として働き始めてからは診療科を超えた相談相手になってもらえたり、患者を紹介したりできるようになります。

また、クラブ活動やサークル活動を行うにあたっては年齢の上下を問わずさまざまな医学部生と交流を深めることができるため、医師に不可欠なコミュニケーション能力を培うこともできます。

クラブ活動やサークル活動に参加することには、このようなメリットがあるため約8割から9割の医学部性が何らかのサークルや部活を行っているのが現状です。

まとめ

ここまで、医学部が6年制である理由やその間に学ぶ内容、一人前の医師になるためにはどの程度の時間が必要なのかという点について解説してきました。

医師は人命を預かる仕事であるため、膨大な知識や技術の習得が必要であることから、6年間大学で勉強を行う必要があることがお分かりいただけたと思います。

また、卒業してからも2年間の初期臨床研修と3年から4年の後期臨床研修を行い、医師として専門性の高い知識と技術を身につけるために学ぶ医師が多いこともお分かりいただけたと思います。

医学部を卒業し、医師国家試験に合格すれば「医師」を名乗ることはできますが、それだけでは世間に通用する一人前の医師と認められるわけではありません。

初期と後期の臨床研修により経験を積むことで、ようやく世間的に「医師」として信用され認められるようになります。

ここまで来た時点では、全ての過程をストレートでこなしたとしてもすでに30歳程度になっています。

この年齢になって初めて、一人前の医師としてスタートを切ることができるようになります。

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