医学部と歯学部の違い

医学部と歯学部ではどのような違いがあるかについて解説

医学部と歯学部、どちらも「医者」になるための学部ですが、なぜこの2学部に分かれているのでしょうか。

医学部を卒業して医師国家試験に合格すれば、歯科以外のどのような診療科の医師になることも可能です。しかし、歯学部を卒業して国家試験に合格しても、歯科医にしかなることができません。

それは学ぶ内容が異なるためですが、医学部と歯学部には学ぶ内容以外にもさまざまな違いがあります。

ここでは、医学部と歯学部の違いについて詳しく解説していきます。

1.医学部と歯学部ではどのような違いがあるのか

ここでは、医学部と歯学部の違いについて詳しく解説していきます。

(1)医学部

医学部には、以下のような特徴があります。

①学習内容

医学部での学習内容は、主に大きく3つに分けられます。

その3つとは基礎医学、臨床医学、社会医学の3つです。

各医学部によりカリキュラムには違いがありますが、一般的な医学部のカリキュラムは以下のようなものです。

1年次には一般教養を中心に学び、それと並行して実際に医療現場での実習も行い、医師としての倫理観や心構えを身につけます。

2年次から4年次までの期間にはカリキュラムの中に専門科目や実習、実験の割合が増えてきます。

解剖学・生理学・病理学などの基礎医学のほかに内科学、外科学、診断学などの診療医学や疫学などの社会医学を学びながらさまざまな実習も行います。

4年次には全国共用試験があり、この試験で習得した知識や技能、態度などが試されることになります。この全国共用試験に合格しないと、5年次に進むことはできません。

全国共用試験にパスし、5年次になるとそこから6年次までは臨床実習を行います。

これらのカリキュラムを終了して卒業試験に合格後、医師国家試験に合格して初めて医師になることができます。

②偏差値

2020年の平均偏差値は私立医学部で65.9国立医学部で68.2と非常に高くなっています。

③学費

2020年度の各医学部の募集要項によると、6年間で必要となる学費は私立医学部で一番安価な医学部である国際医療福祉大学の19,100,000円、一番高額な川崎医科大学で47,365,000円となっており、その平均は約30,540,000円となっています。

国立医学部の場合は、どの医学部でも入学金が282,000円、年間授業料が535,800円という金額が標準です。6年間に必要な学費は3,496,800円と私立医学部とは、けた違いの安さになっています。

国立医学部のほとんどは、この学費で6年間学ぶことができるようになっていますが、千葉大学と東京医科歯科大学に限って言えば年間授業料は642,960円と他の医学部より高額になっています。

また、入学金もその医学部がある地域の住民であれば安価になるなど、大学や医学部生の属性により異なる場合があります。

④入学難易度

「医学部は最難関の学部だ」とよく言われますが、それはあながちウソではありません。

国立医学部の一般入試の場合、1次試験として2021年度から大学入学共通テストが導入されます。

そのため2021年度以降のデータ予測はまだ難しい状況ですが、2020年までのセンター試験の結果を見てみると、最難関の東京大学の医学部ではセンター試験の一般入試・前期のボーダー得点率はなんと94%となっています。

その他の医学部でも合格を手にするためには、85%の得点率が必要だと考えておきましょう。

この得点率を得るためには、一問のミスも許されないと考えて試験に挑まなければいけません。

また、その医学部がある地域の成績上位者が、地元の医学部を目指すケースが増えてきているため、医学部入学はさらに難化してきている傾向にあります。

私立医学部においても、偏差値が70以上でないと合格は難しいと考えておく必要があります。

そのため、国立医学部・私立医学部を問わずどの医学部も「滑り止め」の役割を果たす医学部はないと考えておきましょう。

医学部受験生の中には、浪人生も珍しくありません。というより、現役で合格する人のほうが珍しく一部の大学を除いた場合の現役合格率は30%以下となっています。

また、私立大学においては2浪以上の割合も多くなっています。

このように、国立・私立を問わず医学部の入学難易度は非常に高くなっています。

⑤出題傾向

国立医学部では、大学入学共通テストで5教科7科目の受験が基本となります。

しかし理科Ⅰ(基礎を付した科目)では受験できないため、注意しましょう。

次に二次試験ですが、前期日程は英語・数学・理科2科目の学科試験とともに面接試験を行う大学がほとんどです。それ以外に、国語の学科試験が課される大学もあります。

後期日程では、小論文または総合問題の試験に加えて面接試験が課される大学がほとんどです。数は多くありませんが、学科試験が課される医学部もあります。

私立医学部の場合は、英語・数学・理科2科目に加えて小論文と面接が課せられる大学がほとんどを占めています。

また、大学入学共通テストを利用した入試を実施する私立医学部もあります。

このように各医学部で出題傾向が異なる場合もあるため、自分の志望する医学部の二次試験の出題傾向をしっかりと把握しておきましょう。

⑥卒業後の進路

医師の資格を取得した後2年間は、大学付属の病院などに臨床研修医として勤務します。

その字の通りこの2年間は、医師としての研修期間と考えればよいでしょう。

この臨床研修医の期間中に、自分が進みたい診療科を決めます。

医学部卒業生の中でこの進路を選び臨床医として活躍する人が一番多いのですが、さらに大学院へ進み高度な医療者や研究者を目指す人もいます。

臨床医以外にも、民間の研究所や開発期間などで基礎研究や応用研究などに取り組む人も増えてきているのが現状です。

(2)歯学部

ここでは、歯学部の特徴について詳しく解説していきます。

①学習内容

歯学部は医学部と同じく、6年間にわたってカリキュラムが実施されます。

その内容は歯の治療、加工、矯正といった歯科医に必要な技術の習得から、臨床に関わる内容にまで至ります。

一般的な歯学部カリキュラムの流れは、まず1年次から2年次にかけて一般教養を学ぶと同時に、基礎的な歯科の講義を受けます。

3年次から4年次にかけては、歯科医師にとって必要な科目について、さらに深く学ぶという流れになっています。

歯科とは口の中だけを診療するため勉強は簡単であると思われがちですが、その内容は麻酔学や小児歯科学、口腔細菌学など多岐にわたります。

5年次には医学部と同じような共用試験があり、この試験に合格しないと次のカリキュラムに進むことができません。

共用試験に合格後の5年次から6年次にかけて、本格的な臨床実習を行います。

こうして6年間のカリキュラムをこなした後には卒業試験を受け、合格した人だけが歯科医師免許国家試験を受験することができ、歯科医師国家試験に合格して初めて歯科医師となることができます。

②偏差値

2020年の歯学部の平均偏差値は私立歯学部で45.4国公立の歯学部で59.2となっています。

③学費

国立歯学部で6年間学ぶのに必要な学費は、どの歯学部も同じで3,496,800円となっています。

しかし、この金額は歯学部によってはその歯学部がある県内在住の入学生とそれ以外の入学生で学費に差が出ることもあるため、一律ではない場合もあります。

基本的に歯学部の学費が一律な理由は、基本的に文部科学省による標準額をもとに入学料と授業料が設定されているためです。私立医学部に比べると10分の1程度と非常に安価であることから、倍率も偏差値も非常に高くなります。

一方私立歯学部の学費は、その歯学部ごとに異なります。

学費が一番安価な岐阜県にある朝日大学でも、6年間の学費は19,181,000円となり、最も高額な東京都にある東京歯科大学歯学部の6年間の学費は32,142,000円となっています。

④入学難易度

歯学部の入学難易度は、医学部ほど高くはありません。

その理由は歯学部がある大学の数が比較的多く、偏差値も医学部ほど高くないという点です。

しかし入試問題の難易度や競争倍率は年々増加傾向にあり、そのため偏差値が高い歯学部への合格難易度も高まってきています。

前述したように医学部ほど偏差値が高くないとはいえ、歯学部志望の受験生も増えているためそう簡単に合格できる学部ではないといえます。

⑤出題傾向

国立歯学部の一般入試は大学入学共通テストを受験した後、前期または後期の二次試験を受けることになります。

大学入学共通テストはほとんどの歯学部で5教科7科目が課され、二次試験の前期試験では英語・数学・理科2科目が課されます。後期試験ではほとんどの歯学部で面接試験と小論文、英語や総合問題を組み合わせた試験が課せられます。

私立歯学部の場合には、一般入試前期と後期があります。

一般入試の科目は英語・数学・理科5科目がほとんどですが、大学によって異なるため、志望する大学の出題傾向をきちんと確認しておきましょう。

また、小論文と面接もほとんどの医学部で課されるため、こちらの対策もしっかりと行っておく必要があります。

⑦卒業後の進路

歯科医師国家試験に合格した後は、一年間臨床研修歯科医として経験を積めば、晴れて一人前の歯科医として勤務することが可能です。

その進路は、個人経営のクリニックに勤務する、大学病院に勤務する、大学院で研究を続ける、の3つに分けることができます。

勤務医として実績を積んだ後には開業医となったり、親や親戚のクリニックを継いだりする人も少なくありません。

また、歯学部4年次修了後や卒業後に医学部への編入を目指して編入試験を受ける人もいます。

まとめ

ここまで、医学部と歯学部の違いについて解説していきました。

同じ「医師」と呼ばれる職業に就くために通う学部ですが、医学部と歯学部には大きな違いがあることがお分かりいただけたと思います。

一番大きな違いは、歯学部を卒業しても歯科医にしかなれないのに対して、医学部を卒業すると歯科医以外のどの診療科の医師にもなることができるという点です。

また入学難易度も大きく異なるため、医学部を諦めて歯学部合格を目指す受験生も多く存在します。

しかし、歯学部である程度の単位を取得したり卒業したりした後に医学部への編入試験を受けることができるため、歯科医以外の診療科の医師になりたいと思っている人は、このルートも頭に入れておくと良いでしょう。

一番上へスクロールするボタンを有効または無効にする