医学部受験を検討している方なら誰でも一回は悩んだことがあるであろう「繰り上げ合格」の問題。
特に医学部受験を既に経験しており、一次試験を突破したことがある人なら、「本当に繰り上げ合格って存在するの?」など、なおさらたくさんの疑問を持つでしょう。
今回はそんな繰り上げ合格に関する疑問に徹底的に答え、制度の細かいところまでかなり詳しく説明していきます。是非、最後までお読みくださいませ。
1.医学部の繰り上げ合格とは何か?
まず初めに、医学部における繰り上げ合格とは何かというところを次の3つの項目に分けて詳しく説明してきます。
(1)合格者が辞退した場合に合格が下の成績の者に回ってくること
(2)私立大学と国公立大学で基準は異なる
(3)努力で何とかできることではない
それぞれ掘り下げていきましょう。
(1)合格者が辞退した場合に合格が補欠者に回ってくること
そもそも繰り上げ合格とは何か?というところを簡単に言ってしまうと、「合格者が辞退した場合に合格が下の補欠者に回ってくること」ですね。
実は、通常医学部の合格発表というものは合格したとしても、その大学に入学しない『入学辞退者』が出る前提で発表されます。
例えば、とある私立大学医学部が最初の合格発表(掲示したり、ホームページに貼ったりする)で100人の合格者を発表したとします。
ところが、100人中80人が入学を辞退してしまうことは医学部受験界では珍しくありません。
これは、医学部受験では『より偏差値が高い大学』に受かった場合、偏差値が下の大学を蹴ってその高偏差値の大学に進むことが通例となっているためです。
したがって、大学側は辞退者が出た場合を想定して数百人の補欠候補者を出すことが多いです。そして、辞退者が出た時にはこの補欠候補者の「優先順位が高い方から」合格となっていく、というわけです。
これがいわゆる「正規合格者」と「補欠合格者」の違いです。
(2)私立大学と国公立大学で基準は異なる
私立大学と国公立大学で繰り上げ合格の基準は大きく変わってきます。
これは私立大学と国公立大学の学費差から来るもので、例えば私立大学と国公立大学両方受かった場合にどちらに進学する確率が高いかと言うと、学費の安い国公立大学へ進学する確率の方が圧倒的に高くなります。
したがって、国公立大学では私立大学ほど「補欠候補者」を出さないという基準があるようです。(例外的に関西、関東の都市部の私立と地方の国公立両方に受かった場合、都市部の私立に進学するというパターンは意外と多いです。)
(3)努力で何とかできることではない
ここまで解説してきた「繰り上げ合格」ですが、基本的には大学の裁量で合否が決まることが多く、意図的に補欠候補者に入り、合格するという方法はありません。
つまるところ、合格できるか否かは本当に神のみぞ知るという状態で、試験でよい成績を取るということ以外に、確実に繰り上げ合格の可能性を上げる、という方法は存在しません。
また、一部の大学は繰り上げの候補者の番号を公表しなかったり、順位を公表しなかったりしているため、大学内でどのような繰り上がり方法が行われているかは、ブラックボックス状態になっています。
2.医学部で繰り上げ合格は実際に起こるのか?
医学部において繰り上げ合格は実際に起こり得るものなのでしょうか?
実際に医学部受験を経験してきた筆者だからこそ分かることをお教えしていきます。
(1)結論:実際に繰り上げ合格で多くの人間が合格する
結論から言うと、かなり多くの医学部受験生が繰り上げで合格していきます。
それも数十人というレベルでなく、数百人、数千人というレベルで。
これだけ繰り上げ合格者が多くなる理由としては、まずどこの大学でも成績がトップクラスの人間は「正規合格」となります。そして、医学部受験では複数校受験することが通例であるため、同じ人間が複数の大学で正規合格になる確率は高いわけです。
その上で、それら成績トップ層の方々は、より志望する順位の高い大学に進学することが多いため、志望順位が下の大学の辞退者が増えることになります。
例えば、A、B、Cすべての大学に合格した人がA大学に進学した場合、BとCの正規合格を蹴るわけですから、必然的にBとCの枠が一つ余ることになります。この枠を各大学が補欠合格枠から繰り上げ合格で埋めることになるわけです。
つまり、簡単に言うと上位校からどんどんと入学者が決まっていくわけですから、必然的に下に行けば行くほど繰り上げ合格者は増えていくということになります。
(2)どれぐらいの人数が繰り上げ合格で合格するのか?
(1)で紹介した形式で繰り上げ合格が発生するわけですが、実際に繰り上げ合格をするのは多くても数百人であると言われています。
各大学が細かい数値を発表していないので、正確な値は不明ですが、上位校であれば数十人~数百人で、他の大学では多いときは400人近く補欠が回ることもあるようです。
こうやって考えると、意外と多くの方が補欠で合格しているということになりますね。
(3)どういう基準で繰り上がるのか?
ではどういう基準で繰り上がっていくのでしょうか?
考えられる基準としては以下のようなものが挙げられます。
①成績順
まず最も考えやすいのは、純粋に筆記試験、面接試験の順位順です。
試験の点数が1点でも高かった人から順に補欠合格が回っていきます。
ただし、通常試験の点数は開示されない上、他の受験者との点数を比較することもできないため、大学側が順位公表をしていない限り正確な順番は分かりません。
②血縁順
医学部受験界隈ではよく「血縁関係」の方が繰り上がりやすいと言われています。
これは根拠がなく、非常に不透明であることから推測できることですが、確かにどの大学でも一定数、血縁に当該大学の卒業者がいる生徒がおり、かなりの確率で血縁者を優先しているのでは、という憶測がたてられています。
ただし、あくまで憶測の範囲でしかなく、最近の東京医科大学の不祥事からもわかる通り、かなり最近では少なくなってきたと考えられるでしょう。
③年齢、浪人順
最後に、最近ではめっきりなくなったと言われているいわゆる「年齢差別・浪人差別」です。
かつては年齢や浪人の年数で入学の可否を決めていた特定の複数大学があり、近年その不祥事が明らかになったため、文部科学省から是正勧告されておりました。
この一件があってから、各大学は年齢制限や差別などにかなり過敏に対応しており、今ではほとんどないと考えられます。
3.医学部の繰り上げ合格はどのように通知されるか?
ところで、医学部の繰り上げ合格というのはどのように対象者に通知されるものなのでしょうか?
代表的なものを下に列挙してみました。
(1)書面での通知
(2)電話での通知
(3)ホームページでの通知
(4)掲示での通知
(5)メールなどオンラインでの通知
それぞれ簡潔に見ていきましょう。
(1)書面での通知
最もポピュラーで、最も確実性が高いであろう方法です。
ゆうパックなどに合格通知書類が入れられて、入学手続書類とともに郵送されてくるものが一般的です。
最も見逃しが少ない方法ではありますが、通知までに少し時間がかかってしまうので、もやもやする方法の一つでもあります。
(2)電話での通知
最近ではインターネット網の発達によりかなり少なくなってきた方法の一つですが、一部大学では「反応性」の高さから繰り上げ合格の通知手段として使われている模様です。
見逃しは少なめではありますが、携帯電話をマナーモードに設定していたり、そもそも電話を持っていたりしなければ有効な手段ではないため、注意が必要です。
(3)ホームページでの通知
最近では増えてきたオンライン(ホームページ)上での公開。
多くの場合は、パスワードとIDが発行されており、それらを入力して専用画面に進むことで繰り上げ合格が確認できるというものです。
「繰り上げ合格」の可能性がある、ということを知らなければそもそも確認を怠ってしまう可能性があり、せっかく合格していたのに、今回は見送りという形になりかねません。
ある程度一次試験での手ごたえがあったならば、確実にホームページは確認しておくようにしましょう。
(4)掲示での通知
最近ではめったに見られなくなった、大学内での紙掲示板に繰り上げ合格者の番号が記載される形式になります。
この場合は、しっかりとその場所まで出向かなければいけませんから、交通費などももちろんかかりますし、遠隔地の場合は時間がかかるため注意が必要です。
ただし、通常はその他の方法と併用されることが多いため、そこまで敏感にならなくても大丈夫です。
(5)メールなどオンラインでの通知
昨今の感染症対策の事情を踏まえて、今後増えることになるであろう通知形式です。
学校の公式LINEやメールアドレスから、「あなたは繰り上げ合格の対象です」という通知が来るようになるかもしれません。
この場合は、普段から使っている携帯電話などに通知が来るため、見逃す確率も低く、最も効率の良い通知方法であると言えます。
4.医学部の繰り上げ合格で注意すべきこと
最後に、医学部の繰り上げ合格で注意すべきこと以下に2つ挙げておきます。
(1)通知を見逃すとそのまま不合格になる可能性がある
これが一番大きいと思いますが、医学部からの繰り上げ合格通知は、通常「見逃されないように」何度も行われることが多いです。
しかし、一度その機会を失ってしまうと、二度と合格できなくなってしまう可能性があります。
自分が受験した大学がどのような形で繰り上げ合格を通知してくるのか。そして、どういう形式で入学手続きをするのかは予め調べておいた方が良いでしょう。
(2)確率が低いため正規合格以外を目指してはいけない
この記事では繰り上げ合格が「意外と一般的にあるもの」だと述べてきましたが、実際の受験では何があるか分かりません。
本来ならば解けるはずの問題が解けなかったり、逆にいつもならできない問題ができてしまったりという奇跡が往々にしてあり得るのが、医学部受験の本番です。
最初から繰り上げ合格狙いで受験をするのではなく、正規合格で無難に合格することを目指すことが、最終的には医学部合格への道を見出してくれると考えられます。
まとめ
医学部受験における繰り上げ合格の実態について詳しく解説してきました。
繰り上げ合格という制度が実在のものであり、しかもかなりの人数がその制度で医学部に入学しているということは分かっていただけたでしょうか?
この記事を読まれた皆さんが、来春確実に医学部に合格していることを心からお祈りしております。