大学受験業界においても、難しいと名高い医学部受験。
そんな医学部受験ですが、近年受験生の「性差別・浪人生差別」で話題になったことは記憶に新しいでしょう。
では、その中でも「浪人生差別(年齢差別)」について事件が明るみになった後の現代であっても、存在するのでしょうか?
実際に医学部受験に年齢制限はあるのでしょうか?
この記事ではそういった疑問を解決するとともに、年齢に関係なく医学部を攻略する方法についても提示していきます。
1.医学部受験において年齢制限はあるのか?
まずは、純粋に年齢層の高い医学部受験生の多くが抱くであろう疑問、「医学部の受験に年齢制限はあるのか?」ということについてみていきましょう。
(1)結論:無い
結論から言ってしまいますと、現代において医学部受験における年齢制限はありません。
これは医学部受験のみならず、各受験業界においても言えることですが、基本的には去る者は追わず来る者は拒まずというスタンスです。医学部受験も例にもれず、理論上はどんな年代であっても受験し合格することができるということになっています。
また、医学部入学時の年齢や条件について定めた法律もなく、各大学医学部の定める入学試験の受験要綱においても、一切「年齢」のことは触れられていません。
したがって、思い立った時に医学部を受験し合格することのできる権利は、全年齢層において持ちうることになります。
ただし、一事例として50歳代の受験生が合格者平均点を上回っていたにもかかわらず、二次試験で落とされたという例もあります(※)から、実際のところは各大学の裁量に任されてしまっているというのが実情でしょう。
なお、この事例では大学側を受験生側が提訴しており、受験生側は敗訴しています。その後、東京医科大学の不正入試が明るみになり、各大学ともに公平に入学試験を実施していると考えられます。
参考:※buzzfeed<https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/gundaiigakubu-nyushi>より引用
(2)業界の特徴:若くなければ働けないという共通認識はアリ
なお、医学部という学部の特性上、一度入学すれば医師国家試験を受けて、医師として働きだすというのがある意味王道となっています。
医学部生は将来的に勤務医や開業医、すなわち臨床医として働くことを前提に教育されていきます。
その上で、医師という職業が激務であるということを踏まえれば、医師の業界全体で「若い力」が求められてしまうという実情は想像に難くありません。
医師としての登竜門である「医学部受験」において、「若い人材」を恣意的に選択するという行為がこれまで行われてきたことも、納得していただけるでしょう。
しかしながら、現代においては労働環境の多様化、そして医師の役割の多様化により幅広い人材が求められるようになってきていることも事実です。
要するに、各大学とも年齢性別に関係なく人材を求め始めている傾向にあります。
これにより、こと現代においては医学部受験において年齢差別が行われているということは考えにくいです。
(3)医師の職業は激務であり若年でなければ耐えられない
前項でも説明した通り、医師の職務は激務です。
例えば、激務であると言われるような仕事をこなしてきた人間でも癖々してしまうほど、毎日が大変であり、患者の治療のため、急変への対応の為に徹夜が続くということも珍しくありません。
こういった激務をこなすための体力が、若年の人材に有り余っているということは否定しきれない事実です。
したがって、高い年齢で医学部を受験し、その後に医師になるという選択をした場合は、かなりの確率で「体力的に厳しい」労働になることは覚悟しておいた方がいいでしょう。
しかし、これまた前項で説明した通り、現代では医師の働き方も多様化しており、一概に激務を遂行することだけが「美徳」であるとはみなされなくなってきました。
医師の世界は、かなり閉鎖的な環境です。
この環境をいわば「解放」するために、各大学は多様な価値観の受験生を求めているということになります。
2.医学部受験における年齢に関するトラブル事例
では、実際に医学部受験における年齢制限ともとれるような行動により、受験生と大学側がトラブルになった例をご紹介します。
(1)試験総合得点での現役生合格ライン優遇
まずは、福岡大学の事例です。
2018年12月8日の西日本新聞の記事によると、
”福岡大が現役生を優遇し、合格ラインを浪人生よりも低く設定していたことが7日、大学関係者への取材で分かった“※
ということで、実質の浪人生差別をしていたことが発覚しています。
また、同記事内で、
“複数の関係者によると、他にも浪人生と現役生が同じ得点だった場合は現役生を合格させるなどしていた。こうした優遇措置は18年度入試まで長期にわたって行われ”
ていた(※)と紹介されており、不当に現役生の合格ラインを優遇していたことも分かりました。
すなわち、福岡大学は「浪人生を不当に差別していた事実」を認め、その対策に乗り出したことになります。
実際に福岡大学では、浪人生の差別が現段階ではなくなっていると考えられます。
参考:※西日本新聞<https://www.nishinippon.co.jp/item/n/471564/>より引用
(2)面接試験における若年者の得点優遇
先ほどと同じ事例になりますが、こちらは群馬大学医学部での事例です。
50代の女性が、3年間の浪人期間を経て、群馬大学医学部の筆記試験で合格者平均点よりも高い点数を取っていたにも関わらず、面接試験で落とされてしまいました。
この事例では、女性が年齢による不当な差別を受けたということで、大学側を提訴。しかしながら、「年齢による差別をしたという証拠がない」ことから、女性側が敗訴、最終的には東京高裁まで持ち込みますが、敗訴になってしまいます。
最終的な結露としては「敗訴」ですから、法律上、群馬大学医学部は入試における不正を行っていないことになっています。しかし、合格者平均点を上回っているにもかかわらず不合格となってしまった事例として、「年齢差別」を示唆している代表的な事例になりました。
参考:<https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/gundaiigakubu-nyushi>より事例引用。
3.年齢差別は現在でもあるのか?
それでは、ここまで沢山の現役生優遇、つまり年齢差別の事例を見てきましたが、現在においても、医学部受験では「年齢差別」は行われているのでしょうか?
(1)結論:無い
確定的な内容は明らかにされていませんが、「年齢差別はない」と、全国医学部長病院長会議にて公言されているため、ありません。
なお、今後万が一浪人年数などでの合否判定の不当差別が行われた場合は、当該大学が会議からの追放を受けるなどの重い罰則が設けられたため、今後も不当な入試が行われる可能性は限りなく低いと考えられます。
(2)ただし、面接などの印象は若年層よりも悪い
しかしながら、面接において、現役の医師がそれぞれの受験生に対応することは事実であり、それら個人の点数のつけ方までは各大学が制限することはできません。
理由としては、「個人の印象で決めつけるな」という命令を各教員に行った場合、その指示自体が面接試験の点数操作(恣意的な点数操作)につながると考えられるためです。
したがって、面接官個人が「浪人生、女子」に低い点数をつけることは今後とも考えられる事象です。医師の狭い社会により、柔軟で多様性を認める考え方が浸透しない限り、続いていく傾向であると考えられます。
ただし、東京医科大学をはじめ、各大学は「性別、年齢で不当に低い点数をつけることは認められない」としており、事実上不当な差別はなくなった形になっています。
(3)とはいえ幅広い年齢層の受験生が医学部に合格している
高い年齢層の受験生が不当に差別されることがなくなったため、現在では幅広い年齢層の受験生が医学部に合格しています。
1浪が33%、2浪以降が26%と非常に高い年齢層であっても、医学部に合格していることが分かります。※
参考:※ https://www.bigbang-web.jp/mfg/student-who-failed-entrance-exam/
4.高い年齢層でも医学部受験を突破するには?
ここまでは、医学部受験において年齢制限、年齢差別がないという事実をお伝えしてきました。
それでは、医学部受験生は全員が平等に合格の機会を与えられているという仮定の下、実際に高い年齢層であっても医学部に合格するにはどのような対策が必要になってくるのでしょうか?
その内、特に必要であると思われる事項を以下に示しました。
- 自分で医学部受験情報を収集する
- 医学部専門予備校に相談する
以上2点ですので、それぞれ解説していきます。
(1)自分で医学部受験情報を収集する
年齢層が高めである医学部受験生が、まずすべきことは受験情報の収集でしょう。
確かに医学部受験において、年齢差別、年齢制限がないとはいえ、大学の特色として、高い年齢層の生徒が少ない大学はあるはずです。
そういった場合、入学してから苦労する場合が多いため、しっかりと事前のリサーチが必要となってきます。
最優先ですべきは、自力でインターネットの情報などを探して、自分に合った志望校を見つけるところから始めましょう。そして、気になった大学があれば、直接大学に連絡するなどして、しっかりと大学の方針を確認しておくといいでしょう。
細かな情報が、医学部受験においては大きな利益につながってきますから、ぜひとも最初は自分の手で情報を集めることをおすすめします。
(2)医学部専門予備校に相談する
そして、自分の力だけでは情報を集めきれない、医学部受験の対策もしっかりと行っていきたいと思った場合には、やはり医学部受験の専門予備校に相談しに行くことをお勧めします。
特に、進路情報などにおいて、医学部情報を豊富に持っている医学部専門予備校は多く、自分の力だけで挑むのは難しそうだと思った場合は、ぜひ頼ってみるとよいでしょう。
まとめ
この記事では、「医学部では年齢制限はあるのか?」ということについてお話してきました。
例え年齢が高かったとしても、医学部で勉強する機会というのは、全受験生に平等に開かれています。
ぜひ、この記事を読み込んでいただいて、受験に挑んでください。皆様の合格を心よりお祈りしております。